穴があったらこもりたい

住野よる『君の膵臓をたべたい』感想

普段選ばないジャンルの小説ですが、流行ってた当時に、本を読まない妹が読破したと聞いて、貸してもらいました。

最近家の本棚で久しぶりに見かけたので、感想書きます。(今さら感)

 

…ちなみに私は、「なんか世間で流行ってる」「青春&恋愛もの」「パステルカラーな色味の表紙」「”あなたもこの結末にきっと涙する”的なキャッチコピー」…こういうものをなんとなく避けちゃう体質です。(食わず嫌いともいう)

こんな感じの、ひねくれものでも、いざ読んでみると面白かったので意外でした。
案外、根暗な人にもおすすめかも…?

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ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて―。読後、きっとこのタイトルに涙する。「名前のない僕」と「日常のない彼女」が織りなす、大ベストセラー青春小説!
(「BOOK」データベースより引用)

 

内容

 病気で余命わずかだけど、病気のことを家族以外には秘密にしている「山内桜良」と、ひょんなことから、病気のことを一人だけ知ってしまった、主人公の「僕」との物語です。
まったく性格の違う二人が、咲良の病気をきっかけに、交流していきます。

ちなみに主人公の「僕」視点で話は進んでいきます。

 

暗い「僕」

ここが、根暗な人にもおすすめかも…?と言った理由なのですが、
それは主人公の「僕」の性格です。

・人と関わることが苦手(関わらないようにしている)
・友達がいない
・暗めで大人しい性格
・趣味は読書

こんな感じです。
こういう人に共感する人もいるんじゃないでしょうか。私はたまに「あーその感じわかるかも~」ってなりながら読んでました。

登場人物に共感できるかってところも、物語に入り込めるかに関係してる気がしますね。

 

明るい「咲良」

そんな「僕」に対し、明るくてクラスの人気者の咲良。

まったく真逆の二人ですが、焼き肉を食べに行ったり、旅行に行ったりと、仲良く一緒に行動…というより、咲良が「僕」を連れまわします。

「僕」は咲良の病気を知っているのと、流れに身を任せる草船的精神で、病人だけど元気いっぱいな咲良に、なんだかんだでついていきます。

 

そして、この真逆な二人の、気の合った軽妙な会話が面白い。

「元気ないねー。まさかと思うけど乗り気じゃないとか?」
「いや、乗ってるよ。君の計画にも、新幹線にも。そんな自分を見つめてたところだよ」
(省略)
「自分自身を見つめるくらいなら、私を見つめてよ」
「だから、本当に、どういうつもりで言ってんの、それ」
(本文より引用)

さらに、たまに咲良が言う、反応に困る発言も面白い。

「絶対するよ!鼻腐ってんじゃないの?」
「君みたいに脳じゃなくてよかったよ」
「腐ってるのは膵臓ですぅ」
「その必殺技、卑怯だからこれから禁止にしよう。不公平だ」
(本文より引用)

 

ちょくちょく、こういう「どう返せばいいの?」ってなる発言をかましてきます。
ずるいっちゃあずるいのか?(笑)

しかし咲良も、「僕」にだからこういうことを言えるんだろうし、重くならない二人の独特な関係も良い感じです。

 

クラスの反応

「明るくてクラスの人気者の咲良ちゃんが、地味でいつも一人のあの子と、最近よく二人で行動してるらしい」

もちろん噂になりますわな。
そしてこのクラスメイトたちの反応が面白い。

ひそひそと噂する人
堂々と「僕」に聞きに来る人
かるーく「僕」に聞きに来る人
咲良が心配で敵視する人
陰湿な人

など…

そして必然的に人と関わらなければいけなくなった「僕」と、おそらく友達に質問攻めにされてるであろう咲良と、二人の反応も注目です。

 

ちなみに、クラス内でのいじめとかはないので、そういう描写が苦手な人も大丈夫だと思いますよ~
(ちょっといたずら?はあれど、「僕」が割り切ってるので暗くならない)

 

ラスト

感動とか、命の大切さとか、そういう感想は上手く書ける自信がないので、今回省きますが、代わりにラストの方の良かったところを。

スッキリします。

あぁ、あの場面は、あの行動は、あの言葉は、そういうことだったのかと。
読みだしたときから気になっていた、あの書き方もそういうことだったのかと。

徹底的に「僕」目線だったからこその、ラストの感動と伏線回収が見事でした。

 

まとめ

恋愛小説かなぁと思って読んだけど、違いました。

話自体は重いですが、読みやすい文章と、軽妙な会話、読後感も暗い気持ちにはならないので、普段読書しない人にもおすすめです。
(ちょっと哲学っぽいところも良き)

あと人との関係を、「友達」「恋人」などのカテゴリーにあてはめるのが、なんだか苦手な人にもおすすめです。

 

…1年近くぶりに感想書いたけど、うまく書けてるかな