シャミッソー『影をなくした男』感想
謎の人物が出てくる、ちょっと変な話は大好物なので、あらすじに惹かれて読んでみました。
不思議で可哀そうな話ではありますが、後半は結構意外な展開でした。
是非この物語に出てくる「影」とは何なのか、考えながら読んでほしいです。
「影をゆずってはいただけませんか?」謎の灰色服の男に乞われるままに、シュレミールは引き替えの“幸運の金袋”を受け取ったが―。大金持にはなったものの、影がないばっかりに世間の冷たい仕打ちに苦しまねばならない青年の運命をメルヘンタッチで描く。
(「BOOK」データベースより引用)
内容
主人公の貧しい青年、シュレミールは、金持ちのヨーン氏の家に訪れた時、灰色の服を着た、長身痩躯の怪しい老紳士に出会います。
そして、あらすじのとおり、いくらでもお金が出てくる「幸運の金袋」と自分の影を、半ば衝動的に交換してしまいます。
まぁ、影ですからね。普段何の役にも立たないし、もともと貧乏だったシュレミールが、とっさに渡してしまうのも無理もありませんが、実は影は金よりも重要だったという……
影を失ったシュレミール
そうして、大金持ちになったシュレミールですが、世間はものっすごく冷たい。とんでもなく冷たい。
ちょーっとだけ同情もされるけど、基本「影のないヤツは人間じゃねぇ」って感じです。もう迫害です。
で、シュレミールは、忠実な召使のベンデル(※めっちゃ良い人)以外は、基本軽蔑されるので、影が無いことを世間にばれないようにするため、お金はあるけど、しんどい生活を送ることになります。
影って?
無かっただけでこんだけ軽蔑されるって、この物語の「影」ってどういうもの、または、何を表してるんだろう?と思ったので、書き出してみました。
・生まれた時から、誰にでもある
・影自体は何の力もない
・無いと軽蔑される
・たまーにベンデルみたいな、無くても軽蔑しない人がいる?
・影が出ない時間(夜とか)だと、みんな普通(影が無いと分かるとダメ)
・シュレミールは影自体には興味ない
……うーん、わからん。
この物語の中では、影はそういうモノなのか、それとも何かの比喩なのか……
シュレミールのその後
影=人とのつながりを失って、無限のお金と、忠実な召使(というより友達?)を手に入れたシュレミール。
とある人に恋をしたり、なんやかんやしますが、
この後どうなるかというと(※ほんのちょっとネタバレ)
全部失います。
影はそのまま帰らず、恋人も、召使のベンデルも、金袋も。
でも、そこからまさかの展開で、シュレミールの人生は好転していきます。
すべてを失って、逆に肩が軽くなって、前向きになり、運も向いてくる……
物語といえど、勇気づけられる展開です。
怪しい老紳士
そういや、影を買った謎の男の感想がまだでした。
この怪しい男、金持ちの集まり?にいつの間にか紛れ込んでいたのですが、ポケットから何でも出てくるんですよね。
望遠鏡に、絨毯、テント、馬まで。
そしてなぜか、周囲の人は感謝の言葉どころか、驚きの声すらなく、普通に受け取ります。
変に思っているのはシュレミールだけ。「なんやあいつ!?」「てかなんで他の人普通に受けとってんの!?」ってなります。
さらに、シュレミールに「影をゆずってほしい」と持ち掛け、幸運の金袋の他にも、何でも開けられる鍵だとか、食べたい料理が出てくるナプキンとか、色々な不思議アイテムを出してきます。
そして物語後半、影を返すための条件を言ってきますが……怖いですね~この人。
影が欲しいと言ったのは、このためだったのかっていうね。
不思議なポッケでかなえてくれる(※罠)だったのかっていうね。
ドラえもんというより、喪黒福造っぽいけど。いや喪黒さんよりひどいか。
まとめ
寓話っぽくて、最後の方はそんなに悲惨でもないので、読みやすかったです。
不思議アイテムが出てくるのも面白い。
これを読んで、お金では買えないけれど、当たり前にあるものを大事にしようと思うのか。
それとも、世間の目を気にせず、お金に執着せず、自分らしく生きていこうと思うのか。
それとも、怪しい人のうまい話には、乗らないようにしようと思うのか。
複雑な話ではないので、色んな捉え方が出来て、面白いなと思いました。
ちなみに私はシュレミールと同じ目にあったら、なんかもう色々諦めて、さっさと大金を使って、ひきこもり生活を始めると思います。(コミュ障)
(おまけ)ドラえもんとの共通点
「影をなくした男 ドラえもん」で調べると、結構出てくるので、やっぱ似てるよなぁと思いました。なので、共通点を書き出してみます。
・なんでも出てくるポケット → 四次元ポケット
・不思議な鍵 → 通り抜けフープ?
・料理が出てくるナプキン → グルメテーブルかけ
・幸運の金袋 → これは思いつかない…デビルカードは対価に身長とられるし
・影を切り取る → かげきりばさみ
・隠れ蓑 → とうめいマント
・魔法の靴 → どこでもドア?
ちなみに、かげきりばさみが出てくる「かげがり」という話は、影が自我を持ってしまうという、ドラえもんの中でも結構怖い話で、面白いですよ。
(最後ドラえもんの紹介になっちゃった)