穴があったらこもりたい

スティーヴン・キング『IT(下)』感想

こないだやっとこさ読み終わりました。謎の達成感。

前回はこちら。(あらすじや内容は、こっちに書いてます)

l84blog.hatenablog.com

ちなみに今回の感想、ネタバレ無しで頑張りますが、
一応物語後半の内容に触れるので、気になる人は見ないでね……

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bstadによるPixabayからの画像
内容

上巻では、大人時代(現代)で話が進みつつ、子供時代を振り返る、
またはデリーに来たことによって、忘れていた子供時代が、
少しずつ思い出されていく…という構成で、
ゆったりとした雰囲気で物語が進んでいきました。
(多少退屈な場面も多…いや、なんでもないです)

しかし下巻では、時代が交互に描かれる構成は変わりませんが、
ITとの決戦が近づいてくるにつれて、
大人時代と子供時代が入れ替わる頻度が、どんどん短くなっていき、
ラストの方のスピード感と緊迫感は、かなり手に汗握ります。

 

前半と後半の怖さの違い

最初、ジョージの死から始まり、
ITによる怪奇現象と殺人が次々と起こります。

動く写真や、排水溝の血、巨大な鳥や瘡っかき男など…

緊迫した場面(逃げる場面)もありましたが、
どちらかというと、おどろおどろしい恐怖が多くありました。

それが後半になってくるにつれ…なんというか…
えげつない場面が多くなってきます。一言でいうとグロい!

しかも例のごとく描写が細かいので、ゲンナリします。
私は怖いよりグロいほうが多少ましなので、良かったのですが…

苦手な方は食前、食後ではなく、食間にお飲み…じゃなくてお読みください。

 

さらにさらに、怖いのはITだけではなく、
7人をいじめていた不良たち、特にヘンリーが、
子供時代、大人時代両方で、はみだしクラブを追い詰めます。
ある意味ヘンリーも、可哀そうな環境で育ってはいるのですが、
どんどん狂っていく様はかなーり怖いです。

ベヴァリーなんかは、
子供の時は父親、大人になってからは夫に暴力を振るわれる…
というか殺されかけます。

もうね…ITいなくても十分怖い…むしろITより人間が怖いです……

 

あっそうそう、話はそれますが、怖くはないけど毒親っぽかったエディの母親。
言いなりだったエディがとうとう言い返します!
あの場面はスカッとする上に、エディの成長が感じられて良きでした。

 

ITの正体

基本はピエロの姿で、相手が最も怖がる姿に変われて、神出鬼没。
そんなITの正体は…!?
…って言っちゃうと、とんでもないネタバレになるのでもちろん言いませんが。

ただ、正体がわかる前(対決前)に、子供たちがとある儀式をして、
そこでITがどこから来たかがわかるのですが、この時点でめっちゃ意外でした。

さらに最後のほうで正体がわかりますが、これはもっと意外で、
正直、本当のところITがどういう存在なのかは、ちゃんとわかりませんでした。

これから読む人は、ITの正体は何なのか、
幽霊か、呪いか、妖怪か、妖精か、悪魔か、神様か、宇宙人か、
考えながら読むと、ラストがもっと面白くなるのでおすすめです。

 

お気に入りの場面

怖いだのグロいだの書いたけど、もちろん良い場面はたっくさんあるので、
IT下巻での、私のお気に入りの場面をいくつか紹介します。

 

一つは目次でいうと、「世紀の石合戦」
マイクが来て、7人初めてそろった場面でもあるし、
ヘンリーたちを、はみだしクラブみんなでやっつけた場面でもあるのですが、
私のお気に入りは、石合戦が終わった後の場面。

「爆竹やらない?」スタンが訊いた。にっこりとしたマイクの笑顔がその答えだった。
(本文より引用)

マイクとは初めましての状態&不良たちと戦った後で、緊張気味だった雰囲気が、
この短い場面で一気に解けるんです。
子供同士が仲良くなるのって、短い言葉で十分なんだなぁとしみじみしました。

そしてこの後みんなでクラブハウスを作ります。
のちに建築家になるベンが、ダムに引き続き指揮をとっているのが良いですね。
自分たちの隠れ家を作る……あぁ青春…あの頃に戻りたい(そんな過去はない)

 

あともう一つ、ネタバレなので詳しくは書けませんが、ラストの方がね…
こうなることは仕方ない、この方が良いってわかっていても、
もう何も思い出せなくなるのかなぁと思うと…ねぇ?(泣)
この長ーい小説を全部読んだ人なら、必ずラストは切なくなると思います。

 

そしてそして(まだあるのかよ)
一番お気に入り、というか衝撃だったのが、IT視点で語られるパートがあることです。
まさかIT本人が何を考えていたかわかるなんて…
確かに人外なんだけど、ただのわけのわからない化け物でもなくて、
考えがあって、感情めいたもの?も見えるところが、面白かったです。

 

まとめ

とにかく長くて、これいつ終わるんだ?と思いながら読んでいましたが、
最後の方になると、えっもう終わり?と思ってしまうような小説でした。

ホラーなんだけど、青春小説でもあるので、
私のようにホラーが苦手な人も、ぜひ挑戦してほしいです。

 

ちなみにこの本を読んだ当初の目的、
「映画が怖くて見たいのに見れないから、まず原作から慣れよう」作戦ですが、
これは完全に失敗でした。むしろ映画ますます怖くなりました。どうしよう。