穴があったらこもりたい

トーベ・ヤンソン『ムーミン谷の彗星』感想

台風が来てますね。しかもなんかヤバそうなやつが。

私が住んでるところは幸い、直撃はしなさそうですが、それでも怖いですね…
バイク通勤怖え……

でも備えもしたのなら、もう怖がってても仕方がないので、
せっかくなんで、この状況にぴったりの小説を久々に読み返しました。

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TheOtherKevによるPixabayからの画像

長い尾をひいた彗星が地球にむかってくるというのでムーミン谷は大さわぎ。ムーミントロールは仲よしのスニフと遠くの天文台に彗星を調べに出発し、スナフキンや可憐なスノークのお嬢さんと友達になるが、やがて火の玉のような彗星が…。国際アンデルセン大賞受賞作家ヤンソンの愛着深いファンタジー
(「BOOK」データベースより引用)

内容

ムーミン谷の彗星」は、全9作あるムーミンの小説のシリーズの、実質1作目です。
実質というのは、長らく絶版だった幻の1作目があるからです。
でもムーミンを読み始めるなら、彗星からがいいかなぁと個人的には思います。

 

さてさて、ムーミンといえば原作小説だけではなく、コミックス、絵本、アニメ、
北欧雑貨や、あとテーマパークもできたりして、色んなところで目にします。

私はアニメとかは見たことありませんが、だいたいムーミンの印象って、
ほんわかしてて平穏で…って感じじゃないですか?

私はそのほんわかな印象でこの原作を読んで、かなーりびっくりしました。
シリーズ初っ端からムーミン谷、てか地球滅亡の危機。

ムーミンでまさかの自然災害。台風接近中の今がぴったりすぎる内容なんですよね…

 

彗星接近の描写

魅力的なキャラクターやストーリーはもちろん素敵ですが、それは後に置いといて、
まずは、彗星接近で荒れる自然の描写について。

この話でずっと漂っている、不穏な空気や不安感はほとんど、
彗星接近の描写が、子供向けとは思えないほどリアルなためだと思います。

雨上がりに一面に広がる、どす黒い汚れから始まり、
赤い空に、干上がった海、ものすごい暑さ…
さらにイナゴの大群や、我先にと逃げる住民たちなど、結構怖いです。

 

魅力的なキャラクター

そんな不安な空気を和らげるのは、
ムーミンや、スニフ、スナフキンなどのキャラクターです。

ほとんどというか…もう全員がマイペースすぎて…
緊急時でも、すっとぼけた会話をしていたりするところが、大変微笑ましいです。

 

唯一、常識的というかしっかりしてるのがスナフキンスノークですが…

スノークは、とにかく会議を開こうとするあたりはマイペースだし、

スナフキンは、よくムーミンたちや周りの状況を見ていて、
一瞬落ち込んでも、すぐに自分にできることをひょうひょうとこなしますが、
緊急時でもダンス会場に寄り道しようとするムーミン一行を、
見るだけなら…と止めないで、結果自分も楽しんじゃうあたり、
やっぱりマイペースなのかなぁと思ったりしました。そこが良いんだけどね。

 

あっ、あとマイペース関係ないけど、
とある場面で、ムーミンが言う悪口がキレッキレで面白すぎるので、
そこは必見…というか必読です。
(アニメではスナフキンが言ってるみたいですね。それも絶対面白い)

 

最強?ムーミンママ

個人的に一番マイペース…というか何事にも動じない、心の広いキャラクターが
ムーミンママだと思っています。

 

例えば最初の方の場面。じゃこうねずみという哲学者のおじさんが、
地球は滅亡するとか、宇宙の話や、不安なことばかり言って、
ムーミンとスニフがそのことばかり頭から離れず、遊ぶ気力も無くします。

そこでムーミンパパが、子供たちが星のことしか考えられないのなら、
天文台に行かそうと提案して(このパパの発想もすごい)ママも同意します。

そして、「宇宙がほんとうに黒いのかわかったら、うちのみんなが助かるわ」
ムーミンとスニフに言って、「ママが安心できるのなら」と、
2人は冒険に出かけます。

 

この場面の感心するところは、ムーミンパパとママが、
まだ小さな(年齢はわからんけど)子供たちを、2人だけで旅をさせるところと、
あえて、2人が怖がっている、星や宇宙を観測しに行かせるところ。

そしてムーミンママが、ただ行ってきなさいだけじゃなく、
行ってくれたらみんなが助かると言うところ。

そりゃ、ママを安心させるために冒険に行くんだって、少年だったら燃えますよね。
うまいこと言うなぁと思いました。

 

そして彗星接近で、住民たちが必死で避難している場面。
ムーミン谷に残ったムーミンママが、何をしていたかというと、

家の中ではムーミンママが、おちつきはらって、しょうがビスケットを、やいているところでした。
(本文より引用)

 しょうがビスケット焼いてました。

ほかの住民が避難して、ムーミンパパがこんなことなら旅に出すんじゃなかったと、
後悔と不安でうろうろしてる横で。

なんならムーミン帰還祝いのデコレーションケーキ作ってました。

動じなさというか…ムーミンママの安心感やばいですね…
この後の展開も、ママのマイペースぶりが発揮されていました。

 

まとめ

ほかにもスナフキンの名言とか、可愛い押絵とか、
言いたいことがたくさんありますが、長くなるのでまとめます。

 

私が心に残ったところは2つ。

1つ目は、もしこの話がヒーローものなら、彗星衝突を何としてでも止めますが、
この作品はいくらムーミンたちが大冒険をしたところで、
どうしようもないところです。
どうしようもないなかで、ムーミンたちがそれぞれ、どう行動して考えるか…
そこが結構考えさせられました。

2つ目は、登場するキャラクター。ちょっと個性的な人が多いです。
現実にいたら、もしかしたら距離を置かれちゃうかもしれないような人たち。
それでもこのムーミンの世界では、みんな当たり前に受け入れられています。
その空気感がとても好きで、自分もこの世界に行きたくなりました。

 

ムーミンのことになると、ずっと書いていられそうですが、
2000文字とっくに超えちゃってるんでそろそろ終わっときます。
雷も鳴ってきたしね。