穴があったらこもりたい

心が弱ってるときにおすすめな小説3選

私はブログ名の通り、どこかにひきこもる&読書やアニメ、映画鑑賞が好きです。
いや、好きというより、エネルギー補給と言っても過言ではない(過言)

それでも、精神的にしんどいときは、なかなか見たいものも見れないというか、
エネルギー補給にも、エネルギーが必要なわけです……

そんなわけで今回は、風邪をひいたときの食事に例えて、消化に良くて優しい?小説を紹介します!

【レベル1】ムーミン谷の彗星(ムーミンシリーズ)

風邪で例えるなら、ポカリレベル。食欲がほぼ0。

長い尾をひいた彗星が地球にむかってくるというのでムーミン谷は大さわぎ。ムーミントロールは仲よしのスニフと遠くの天文台に彗星を調べに出発し、スナフキンや可憐なスノークのお嬢さんと友達になるが、やがて火の玉のような彗星が…。国際アンデルセン大賞受賞作家ヤンソンの愛着深いファンタジー
(「BOOK」データベースより引用)

 

しんどい時は童話の世界で癒されましょう。
ムーミンシリーズで、私がお気に入りなところは、個性的なキャラクター。
ひょうひょうとしたスナフキンや、安心感がものすごいムーミンママのほか、
中には現実ではちょっと距離を置かれそうで、だけど憎めない可愛い人たちも。

そんな個性的な人(生き物?)たちが、誰ものけ者にされず、
だからといってめちゃ親密でもなく、独特なあったかい空気感の中で暮らしています。

あぁ行きたいムーミン谷……何なら埼玉県のムーミンパークでも良い……

ちなみに彗星から読まなくても、たとえば、
ムーミン谷の仲間たち」なんかは短編集なので、読みやすくておすすめです。

逆に気をつけてほしいのが、「ムーミンパパ海へいく」
メンタル病んでるときどころか、いたって健康なときでさえ注意。
いや、好きなんだけどね……でも気をつけて。

 

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【レベル2】イン・ザ・プール精神科医 伊良部シリーズ)

風邪で例えるなら、おかゆレベル。

「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。
(「BOOK」データベースより引用)

 

自分が悩んでるとき、同じように悩んでる人を見て、なんだか安心することってないですか?
この小説では、人に言えないような悩みを持つ人たちが、精神科医の伊良部先生のところに回されて…やってきます。

しかしこの先生が、かなりの変人。
人の話は聞かず、子供っぽく、なんか変な方向で行動力があります。しかもすぐ注射打つ。
当然患者は、なんやあいつ!?二度と行くか!ヽ(`Д´)ノ と最初はなるのですが……?

なんだか伊良部先生を見ていると、前向きになるというより、良い意味で色んなことがどうでもよくなるので、この小説おすすめです。

ちなみに私は、架空の人物の中で、一番会いたい人が伊良部先生なのですが、母は「伊良部先生が自分勝手すぎて腹立つ。現実で会いたくない」と言っていたので、合わない人はいるようです。
心が弱ってるのにイライラしたら本末転倒なので、人によっては注意ですね。

しかし、現実の読者も苛立たせる……面白すぎるぞ伊良部一郎……

 

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【レベル3】夢をかなえるゾウ

風邪で例えるなら、おにぎり&味噌汁レベル。

ダメダメな僕のもとに突然現れた、ゾウの姿をしてなぜか関西弁で話す、とてつもなくうさん臭い神様“ガネーシャ”。聞けば、ナポレオン、孔子ニュートン、最近ではビル・ゲイツまで、歴史上のキーパーソンは自分が導いたという…。しかし、その教えは「靴をみがく」とか「コンビニで募金する」とか地味なものばかり。こんなんで僕は成功できるの!?TVドラマ化、アニメ化、舞台化された、ベスト&ロングセラー。過去の偉人の具体例から導き出される、誰にでもできる超実践的な成功習慣を小説に織り込んだ、笑って、泣けて、タメになる、まったく新しいエンターテインメント小説。
(「BOOK」データベースより引用)

 

外で読んではいけません。絶対に。笑うから。
自己啓発本?として有名ですが、小説としてめちゃくちゃ面白いです。
家で読んでも、外で思い出し笑いするレベル。ドラマ見た人なら、脳内に古田新太が降臨します。

そして笑いのなかに、ためになること、心が軽くなる言葉、感動する場面も、しっかりとあります。

ただ、そんだけ面白いのにレベル3にした理由は、
1つは、夢をかなえようとする話だから。

やっぱりね、弱ってるときって、そういう前向きな話が受けつけないときもあるのでね…

そしてもう1つ、感情がジェットコースターに乗るから。
笑いと感動の落差が激しすぎる。ドドンパかよ。(※読めばわかる)

感情が振り回されるのって、すごく良い作品だからだと思うのですが、まぁこれも弱ってるときは疲れるものなので……

ちなみに、夢をかなえるゾウは5巻出てるのですが、私が一番好きなのは最新刊の、「夢をかなえるゾウ 0」です。

夢をかなえるゾウなのに、なんと主人公に夢がありません。
しかし私もこれといって、夢とかありませんので、親近感がすごいです。
上司のパワハラの場面はつらいですが、これから読んでも全然OKだと思います。

(小ネタが多いので、出来れば1から読んでほしいけど)

 

まとめ

心が弱ってるときに読みたい小説を、3作品紹介しました。

私はこの中では、イン・ザ・プール精神科医 伊良部シリーズ)が好きで、心が病んだとき用に、普段はあまり読まないようにしています。もはやお守り。処方箋。

こういう本が一冊あると、なんか……なんか………いいよね。

読書好きなくせに、なんとも語彙力のないまとめになりましたが、お守りの一冊を見つける、きっかけになれば嬉しいです。

次は逆に、精神をやられる本を紹介しようかな…

【読みたい飾りたい】おしゃれな表紙の文庫小説8選

電子書籍が欲しいと思いつつ、なかなか手が出せない人で、
さらにその理由が、本の表紙を眺めるのが好きだからって人~!ハイッ(挙手)

ということで、

・文庫本で小説
・読んで、面白いと思ったもの(※重要)
・部屋に飾りたいと思ったもの

を条件に、個人的にグッとくる表紙の小説を紹介します。

(※本当は実際に部屋に飾って、写真撮りたかったけど、著作権とか気になるし、
手元にないものもあるので、amazonのリンク貼ってます)

探偵伯爵と僕

もう少しで夏休み。新太は公園で、真っ黒な服を着た不思議なおじさんと話をする。それが、ちょっと変わった探偵伯爵との出逢いだった。夏祭りの日、親友のハリィが行方不明になり、その数日後、また友達がさらわれた。新太にも忍び寄る犯人。残されたトランプの意味は?探偵伯爵と新太の追跡が始まる。
(「BOOK」データベースより引用)

絵具で描いたような、鮮やかな黄色の表紙は、
子供目線の日記風の文章+ひと夏の物語、という内容にぴったりです。

そしてその黄色に混じる、暗い色も内容とぴったり……

読みやすい文体で、さらに会話が面白いのでおすすめですが、
人や年代によって、読後感がかなり変わるラストです。

 

R62号の発明・鉛の卵

会社を首にされ、生きたまま自分の「死体」を売ってロボットにされてしまった機械技師が、人間を酷使する機械を発明して人間に復讐する「R62号の発明」、冬眠器の故障で80万年後に目を覚ました男の行動を通して現代を諷刺した先駆的SF作品「鉛の卵」、ほか「変形の記録」「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」など、昭和30年前後の、思想的、方法的冒険にみちた作品12編を収録する。
Amazon商品説明より引用)

実は新潮文庫から出ている、安部公房の小説は、
全部同じテイストで、集めたくなるぐらいかっこいいのですが、
今回は短編集で読みやすいのと、私が「R62号の発明」が好きなのとで、
この小説を選んでみました。

「R62号の発明」は内容はもちろん、書き出しが今まで読んだ小説の中で、
いっちばん好きです。

ちなみに長編?だと「人間そっくり」が好きです。

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女王の百年密室(百年シリーズ)

女王が統治する幸福で豊かな楽園。不満も恨みもない世界で起こる空前の殺人事件。女王の塔の中で殺されていたのは…。完全なる密室。そして、完全なる犯罪。誰が、どうやって、何のために…?僕とパートナのロイディは推理を開始する。しかし、住民たちは皆「殺人」の存在さえ認めない。「密室」の謎、「百年」の謎、「女王」の謎、そして「神」の謎。“密室”の扉は、いま開かれる。新世紀=森ミステリィの黄金傑作。
(「BOOK」データベースより引用)

またまた森博嗣です。
異国情緒がある表紙は、主人公たちが迷い込む、
古風で幻想的な「ルナティックシティ」のイメージまんまです。

宮殿があって女王様がいるのに、しっかり未来でSFで、さらに哲学的。
主人公のミチルとロイディの掛け合いも面白い。

この世界観がたまらないです。旅モノが好きな人にもおすすめ。

ちなみにシリーズで、3作あります。最終巻はかなり難易度高めですが。

 

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残ったものの中には異星に安住の地を求めるものも多い。そのため異星での植民計画が重要視されるが、過酷で危険を伴う労働は、もっぱらアンドロイドを用いて行われている。また、多くの生物が絶滅し稀少なため、生物を所有することが一種のステータスとなっている。そんななか、火星で植民奴隷として使われていた8人のアンドロイドが逃亡し、地球に逃げ込むという事件が発生。人工の電気羊しか飼えず、本物の動物を手に入れたいと願っているリックは、多額の懸賞金のため「アンドロイド狩り」の仕事を引き受けるのだが…。
Amazon商品説明より引用)

なんかもう持ってるだけで、自分もかっこよくなった気がします。
というか題名がずるい。かっこよすぎ。

内容はわりと考えてしまうというか……
見た目は人間そっくりで、共感性もあるアンドロイドは、もはや人間なのか?
共感性がない、人間らしくない人間はどうなるのか?

1968年の小説らしいですが、面白いです。

ちなみにハヤカワ文庫SFでは、
他にも似たような、かっこいい表紙の小説がありますよ。

 

銃とチョコレート

大富豪の家を狙い財宝を盗み続ける大悪党ゴディバと、国民的ヒーローの名探偵ロイズとの対決は世間の注目の的。健気で一途な少年リンツが偶然手に入れた地図は事件解決の鍵か!?リンツは憧れの探偵ロイズと冒険の旅にでる。王道の探偵小説の痛快さと、仕掛けの意外性の面白さを兼ねる傑作、待望の文庫化!
(「BOOK」データベースより引用)

児童文学的な雰囲気で、実際ひらがなが多く、ちょっと読みづらいです。
が、途中から結構容赦ない展開です。

子供向け?なのに辛辣。
まさにこの、チョコレートなのにギラギラした表紙にぴったりです。

さらに個性的で、なんだか美味しそうな名前のキャラクターにも注目。

 

スカイ・クロラスカイ・クロラシリーズ)

僕は戦闘機のパイロット。飛行機に乗るのが日常、人を殺すのが仕事。二人の人間を殺した手でボウリングもすれば、ハンバーガも食べる。戦争がショーとして成立する世界に生み出された大人にならない子供―戦争を仕事に永遠を生きる子供たちの寓話。
(「BOOK」データベースより引用)

またしても森博嗣です。好きだからね、しょうがないね。
そして「スカイ・クロラ」ですが、これもシリーズで、6作あります。

そしてそして表紙ですが、一色です。清々しい。かっこいい。
内容も戦いの話なのに、淡々とした日常が印象的で、
この単色の表紙に合ってると思います。

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ムーミン谷の彗星(ムーミンシリーズ)

長い尾をひいた彗星が地球にむかってくるというのでムーミン谷は大さわぎ。ムーミントロールは仲よしのスニフと遠くの天文台に彗星を調べに出発し、スナフキンや可憐なスノークのお嬢さんと友達になるが、やがて火の玉のような彗星が…。国際アンデルセン大賞受賞作家ヤンソンの愛着深いファンタジー
(「BOOK」データベースより引用)

ムーミンシリーズ1作目です。ちなみに全9作あります。

ムーミンはイラストが素敵なので、どの小説もかわいいのですが、
私は講談社文庫の新装版が好きです。
背表紙までおしゃれで、1冊買ったら全部揃えたくなります。おすすめ。

内容も、個性的なキャラクター、
中にはちょっと自分勝手だとか、めんどくさいキャラクターもいますが、
みんな受け入れられている、優しい空気感が好きです。

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死神の精度

CDショップに入りびたり、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人に触ろうとしない―そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。
(「BOOK」データベースより引用)

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」とかと並べたい感じの、かっこいい表紙ですが、
内容はハードボイルドではなく、ちょっと軽めの短編集です。
死がテーマでもあるので、軽めと言っていいのかわからないですが……

しかし、死神の千葉さんのキャラクターや、ちょっと笑える場面などが魅力なので、
空いた時間や、休憩の時間におすすめです。

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ちなみに続編の「死神の浮力」は長編です。こっちも面白い。

 

まとめ

 本当はもっと紹介したかったけど、
知ってる小説全部紹介してしまいそうなので、この辺にしときます。
(つまり全部良き)

 

……ちなみに「女王の百年密室」の世界(2113年)では、
図書館は、情報を検索するネットワークの名前で、本はデータ。

紙の本は、記念品か贈答品としてしか製造されず、高級品。
絵画のように飾るのが普通で、読むことはもちろん、収納されることもないそうです。

現実の未来でも、そうなるかもしれないし、
そういう形で、本と素敵な表紙が残るのもいいなぁと思ったけど、
やっぱりしばらくは、紙の本をペラペラめくりたいと思ったり。

でも電子書籍も良さげなんですよね~、うーん(迷)

 

↓表紙つながりで、良ければこちらも……

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シャミッソー『影をなくした男』感想

謎の人物が出てくる、ちょっと変な話は大好物なので、あらすじに惹かれて読んでみました。

不思議で可哀そうな話ではありますが、後半は結構意外な展開でした。
是非この物語に出てくる「影」とは何なのか、考えながら読んでほしいです。

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「影をゆずってはいただけませんか?」謎の灰色服の男に乞われるままに、シュレミールは引き替えの“幸運の金袋”を受け取ったが―。大金持にはなったものの、影がないばっかりに世間の冷たい仕打ちに苦しまねばならない青年の運命をメルヘンタッチで描く。
(「BOOK」データベースより引用)

内容

主人公の貧しい青年、シュレミールは、金持ちのヨーン氏の家に訪れた時、灰色の服を着た、長身痩躯の怪しい老紳士に出会います。

そして、あらすじのとおり、いくらでもお金が出てくる「幸運の金袋」と自分の影を、半ば衝動的に交換してしまいます。

まぁ、影ですからね。普段何の役にも立たないし、もともと貧乏だったシュレミールが、とっさに渡してしまうのも無理もありませんが、実は影は金よりも重要だったという……

 

影を失ったシュレミー

そうして、大金持ちになったシュレミールですが、世間はものっすごく冷たい。とんでもなく冷たい。

ちょーっとだけ同情もされるけど、基本「影のないヤツは人間じゃねぇ」って感じです。もう迫害です。

で、シュレミールは、忠実な召使のベンデル(※めっちゃ良い人)以外は、基本軽蔑されるので、影が無いことを世間にばれないようにするため、お金はあるけど、しんどい生活を送ることになります。

 

影って?

無かっただけでこんだけ軽蔑されるって、この物語の「影」ってどういうもの、または、何を表してるんだろう?と思ったので、書き出してみました。

・生まれた時から、誰にでもある
・影自体は何の力もない
・無いと軽蔑される
・たまーにベンデルみたいな、無くても軽蔑しない人がいる?
・影が出ない時間(夜とか)だと、みんな普通(影が無いと分かるとダメ)
・シュレミールは影自体には興味ない

……うーん、わからん。
この物語の中では、影はそういうモノなのか、それとも何かの比喩なのか……

 

シュレミールのその後

影=人とのつながりを失って、無限のお金と、忠実な召使(というより友達?)を手に入れたシュレミール。

とある人に恋をしたり、なんやかんやしますが、
この後どうなるかというと(※ほんのちょっとネタバレ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全部失います。
影はそのまま帰らず、恋人も、召使のベンデルも、金袋も。

でも、そこからまさかの展開で、シュレミールの人生は好転していきます。
すべてを失って、逆に肩が軽くなって、前向きになり、運も向いてくる……
物語といえど、勇気づけられる展開です。

 

怪しい老紳士

そういや、影を買った謎の男の感想がまだでした。

この怪しい男、金持ちの集まり?にいつの間にか紛れ込んでいたのですが、ポケットから何でも出てくるんですよね。

望遠鏡に、絨毯、テント、馬まで。

そしてなぜか、周囲の人は感謝の言葉どころか、驚きの声すらなく、普通に受け取ります。

変に思っているのはシュレミールだけ。「なんやあいつ!?」「てかなんで他の人普通に受けとってんの!?」ってなります。

さらに、シュレミールに「影をゆずってほしい」と持ち掛け、幸運の金袋の他にも、何でも開けられる鍵だとか、食べたい料理が出てくるナプキンとか、色々な不思議アイテムを出してきます。

 

そして物語後半、影を返すための条件を言ってきますが……怖いですね~この人。
影が欲しいと言ったのは、このためだったのかっていうね。

不思議なポッケでかなえてくれる(※罠)だったのかっていうね。
ドラえもんというより、喪黒福造っぽいけど。いや喪黒さんよりひどいか。

 

まとめ

寓話っぽくて、最後の方はそんなに悲惨でもないので、読みやすかったです。
不思議アイテムが出てくるのも面白い。

これを読んで、お金では買えないけれど、当たり前にあるものを大事にしようと思うのか。
それとも、世間の目を気にせず、お金に執着せず、自分らしく生きていこうと思うのか。
それとも、怪しい人のうまい話には、乗らないようにしようと思うのか。

複雑な話ではないので、色んな捉え方が出来て、面白いなと思いました。

ちなみに私はシュレミールと同じ目にあったら、なんかもう色々諦めて、さっさと大金を使って、ひきこもり生活を始めると思います。(コミュ障)

 

(おまけ)ドラえもんとの共通点

「影をなくした男 ドラえもん」で調べると、結構出てくるので、やっぱ似てるよなぁと思いました。なので、共通点を書き出してみます。

・なんでも出てくるポケット → 四次元ポケット
・不思議な鍵 → 通り抜けフープ?
・料理が出てくるナプキン → グルメテーブルかけ
・幸運の金袋 → これは思いつかない…デビルカードは対価に身長とられるし
・影を切り取る → かげきりばさみ
・隠れ蓑 → とうめいマント
・魔法の靴 → どこでもドア?

 

ちなみに、かげきりばさみが出てくる「かげがり」という話は、影が自我を持ってしまうという、ドラえもんの中でも結構怖い話で、面白いですよ。
(最後ドラえもんの紹介になっちゃった)

詠坂雄二『人ノ町』感想

キノの旅 似た小説」で検索していて、見つけた小説ですが、
表紙が、私の大好きなアニメ「少女終末旅行」の原作者のイラストだったので、気がついたら買ってました。人生初ジャケ買い

そしてちゃんと?中身も面白かったです。今読み終えたばかりなのに、これから何回も読み直す予感がするほどに。

独特な世界観に浸りつつ、意味や意図を考えつつ、ゆっくり読んでほしい小説です。

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旅人は彷徨い続ける。文明が衰退し、崩れ行く世界を風に吹かれるままに。訪れた六つの町で目にした、人々の不可思議な営みは一体何を意味するのか。終わりない旅路の果てに、彼女が辿り着く、ある「禁忌」とは。数多の断片が鮮やかに収斂し、運命に導かれるようにこの世界の真実と、彼女の驚愕の正体が明らかになる。注目の鬼才による、読者の認知の枠組みをも揺さぶる異形のミステリー。
(「BOOK」データベースより引用)

 

内容

あらすじのとおりですが、今よりずっとずっと未来の話(たぶん)
文明が衰退し、昔の建物が遺跡として、わずかに残っている世界です。

だからといって、人々は苦しい生活をしているわけではなく、自分たちの町の風習や考え方の中で、わりと淡々と暮らしています。

そんな世界を、正体も旅の目的も謎な旅人が巡っていく話です。

 

世界観

こういうのって、ディストピア?SF?小説っていうんでしょうか。
どこか乾いていて淡々とした、だけど悲壮感はないような…

色々な町を巡り、その土地の文化や歴史に触れるところは、キノの旅に似ていますが、キノの旅よりは静かで寂しい感じ。
(ちなみに文体は、キノより人ノ町のほうが難しい)

文明が衰退した世界は、少女終末旅行に似ていますが、少女終末旅行と違って、普通に人々が生活していて、食料や資源もあって、明るい感じでしょうか。

さらに哲学的な部分もあって、刺さる人には刺さる世界観だと思います。私は大好物です。

 

旅人

物語の主人公?の旅人。分かっていることは以下。

・女性
・外套を着て、背嚢を背負い、旅をしている
・町に来て最初に、食堂を探してご飯を食べがち
・わりと好奇心旺盛(それで危ない目にあったり…)
・冷静で色々なことを知っている

……うん、情報少ないですね。名前もわからん。謎。

 

ミステリー

あらすじに「異形のミステリー」と書いてあって、期待して読み始めたのですが、最初は「確かに町ごとに、事件?謎?は起きるけど、異形ってほどでは…」と思ってました。ちょっとミステリー風味なロードノベルじゃないかと。最初は。

詳しくはもちろん言いませんが、もっと壮大な謎です。
ちょっと変わったロードノベルと思わせといて~です。裏切られます。良い意味で。

ただ、この小説がなんというか、すべてを書かない、行間を読むことが必要な小説なので、ちょっと想像力がいるかもしれませんが、ちゃんとこの世界のことも、旅人の正体も、すべて答えを出してくれているので、ぜひ読みだしたら、最後まで読んでほしいですね。

 

6つの町

旅人が巡る6つの町の感想を、それぞれ書いておきます。

 

【風ノ町】
いきなり「風来(フェンライ)」とかいう謎オブジェ?が出てきますが、たぶんイメージはこれですね。

 
 
 
 
 
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あと初っ端から、難しいですね。人の考え方、宗教……うーん……
……食堂のご飯が美味しそうでした。(諦めた)

卵をふんだんに使った炒め物と汁物に白米という素朴な組み合わせだ。彩りより実を取った印象で、量もある。旅人は勢いよく食べ始めた。
(本文より引用)

この小説に出てくる料理、どれも美味しそうです。お腹すく。

 

【犬ノ町】

犬だらけの町です。一見、猫島の犬バージョンに見えますが、もっと犬が生活に溶け込んでいるような印象です。

この町の「最初の犬」にまつわる歴史(神話?)があって、それを研究している学者がいます。

私が印象に残ったところは、最初に旅人を助けてくれた犬が最後どうなったか……
在り方?としては正しいのかなと思いましたが、いざ旅人と同じ立場になれば、自分はどういう気持ちになるだろうなぁ……

私たちは日頃思ったより、犬に感情や夢を、勝手に見てるのかもしれませんね。
わんこ可愛いからね。にゃんこも可愛いけど。

 

【日ノ町】

陽神の「玉座」と呼ばれる、めちゃくちゃにでかい、用途不明の謎の建物を中心に、人々が集まり、宗教ができ、町になっています。

この章は後半、まだ文明が栄えていたころの一端が、垣間見えます。さらに旅人の好奇心旺盛が過ぎるところと、「なんでそんなこと知ってんねん」っていう、ちょーーっとした違和感も。

案外この世界は、現代の末路なのか?てかなんで文明衰退したん?
そんな疑問が、ここらへんからちょっとずつ出てきます。

あと、ご飯が美味しそう。

 

【北ノ町】

旅人は極光(オーロラ)を見るため、この町を訪れます。つまりそういう場所。
氷河だらけの寒いところです。でも幻想的。

旅人は数日町にとどまるため、氷河を掘る「氷穴掘り」という仕事をすることに。
何を掘るかは、ネタバレなのでお口チャック……(古い)

ラストは衝撃。ちなみにこの話は、文庫版に書き下ろされたもので、このラストのおかげで、ある考察が捗ります。

あと、この町は蟹味噌を食べる習慣が無いらしいです。(また飯の話)
獲ったときに捨てちゃう。旅人のがっかりする気持ちは、よくわかります。

 

【石ノ町】

今までの町と違い、廃墟の町です。さらに、たまたま目的地が同じだった、医師、商人、旅人の3人で訪れます。

この町は、いたるところに石積みがあるという噂と、不老不死の人が住んでいたという噂があります。

3人はそれぞれ目的が違ったので、現地解散し、旅人は石積みを探しますが……?

かなり重要な章なので、詳しい感想はやめときます。
ただ、旅人の目的が切ない。

 

【王ノ町】

町……なんですけど、王がいます。
というより、人々をまとめたりして、町を作った人を、町の人々が尊敬して、王様として敬っている感じでしょうか。

でもちゃんと衛兵もいます。川があり、とても栄えている町です。

今までの章とは、ちょっと初っ端から、様子が違う感じ。
この最後の章で、すべての謎に答えがでます。あらすじにある「禁忌」も。

現代も、行きつく先はこの答で、この「禁忌」もできるのかなと思ったり……

最後の旅人の行動も、賛否分かれそうです。
私なら旅人のような行動はせず、現状維持を望むかもしれませんが……
他に読んだ人の感想を聞いてみたくなりますね。

 

まとめ

世界観を楽しんでも良し。裏や行間を読んでも良し。哲学的な部分に唸っても良し。
一冊で何回も楽しめる小説だと思います。お得感。

ただ、あんまり根詰めて読んでも疲れるので、最初はさらっと一回読むのが良いんじゃないでしょうか?まさに旅先とかで。

 

あと文庫版は、最後の方のページの小説紹介に注目。
こんな洒落たことできるんやね。

住野よる『君の膵臓をたべたい』感想

普段選ばないジャンルの小説ですが、流行ってた当時に、本を読まない妹が読破したと聞いて、貸してもらいました。

最近家の本棚で久しぶりに見かけたので、感想書きます。(今さら感)

 

…ちなみに私は、「なんか世間で流行ってる」「青春&恋愛もの」「パステルカラーな色味の表紙」「”あなたもこの結末にきっと涙する”的なキャッチコピー」…こういうものをなんとなく避けちゃう体質です。(食わず嫌いともいう)

こんな感じの、ひねくれものでも、いざ読んでみると面白かったので意外でした。
案外、根暗な人にもおすすめかも…?

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ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて―。読後、きっとこのタイトルに涙する。「名前のない僕」と「日常のない彼女」が織りなす、大ベストセラー青春小説!
(「BOOK」データベースより引用)

 

内容

 病気で余命わずかだけど、病気のことを家族以外には秘密にしている「山内桜良」と、ひょんなことから、病気のことを一人だけ知ってしまった、主人公の「僕」との物語です。
まったく性格の違う二人が、咲良の病気をきっかけに、交流していきます。

ちなみに主人公の「僕」視点で話は進んでいきます。

 

暗い「僕」

ここが、根暗な人にもおすすめかも…?と言った理由なのですが、
それは主人公の「僕」の性格です。

・人と関わることが苦手(関わらないようにしている)
・友達がいない
・暗めで大人しい性格
・趣味は読書

こんな感じです。
こういう人に共感する人もいるんじゃないでしょうか。私はたまに「あーその感じわかるかも~」ってなりながら読んでました。

登場人物に共感できるかってところも、物語に入り込めるかに関係してる気がしますね。

 

明るい「咲良」

そんな「僕」に対し、明るくてクラスの人気者の咲良。

まったく真逆の二人ですが、焼き肉を食べに行ったり、旅行に行ったりと、仲良く一緒に行動…というより、咲良が「僕」を連れまわします。

「僕」は咲良の病気を知っているのと、流れに身を任せる草船的精神で、病人だけど元気いっぱいな咲良に、なんだかんだでついていきます。

 

そして、この真逆な二人の、気の合った軽妙な会話が面白い。

「元気ないねー。まさかと思うけど乗り気じゃないとか?」
「いや、乗ってるよ。君の計画にも、新幹線にも。そんな自分を見つめてたところだよ」
(省略)
「自分自身を見つめるくらいなら、私を見つめてよ」
「だから、本当に、どういうつもりで言ってんの、それ」
(本文より引用)

さらに、たまに咲良が言う、反応に困る発言も面白い。

「絶対するよ!鼻腐ってんじゃないの?」
「君みたいに脳じゃなくてよかったよ」
「腐ってるのは膵臓ですぅ」
「その必殺技、卑怯だからこれから禁止にしよう。不公平だ」
(本文より引用)

 

ちょくちょく、こういう「どう返せばいいの?」ってなる発言をかましてきます。
ずるいっちゃあずるいのか?(笑)

しかし咲良も、「僕」にだからこういうことを言えるんだろうし、重くならない二人の独特な関係も良い感じです。

 

クラスの反応

「明るくてクラスの人気者の咲良ちゃんが、地味でいつも一人のあの子と、最近よく二人で行動してるらしい」

もちろん噂になりますわな。
そしてこのクラスメイトたちの反応が面白い。

ひそひそと噂する人
堂々と「僕」に聞きに来る人
かるーく「僕」に聞きに来る人
咲良が心配で敵視する人
陰湿な人

など…

そして必然的に人と関わらなければいけなくなった「僕」と、おそらく友達に質問攻めにされてるであろう咲良と、二人の反応も注目です。

 

ちなみに、クラス内でのいじめとかはないので、そういう描写が苦手な人も大丈夫だと思いますよ~
(ちょっといたずら?はあれど、「僕」が割り切ってるので暗くならない)

 

ラスト

感動とか、命の大切さとか、そういう感想は上手く書ける自信がないので、今回省きますが、代わりにラストの方の良かったところを。

スッキリします。

あぁ、あの場面は、あの行動は、あの言葉は、そういうことだったのかと。
読みだしたときから気になっていた、あの書き方もそういうことだったのかと。

徹底的に「僕」目線だったからこその、ラストの感動と伏線回収が見事でした。

 

まとめ

恋愛小説かなぁと思って読んだけど、違いました。

話自体は重いですが、読みやすい文章と、軽妙な会話、読後感も暗い気持ちにはならないので、普段読書しない人にもおすすめです。
(ちょっと哲学っぽいところも良き)

あと人との関係を、「友達」「恋人」などのカテゴリーにあてはめるのが、なんだか苦手な人にもおすすめです。

 

…1年近くぶりに感想書いたけど、うまく書けてるかな

表紙と内容にギャップのある小説4選

人の第一印象は、見た目が55%と聞いたことがあります。

小説だって、大切なのは中身でしょ!っていう人も、
ちょっとは表紙に影響されちゃって、
怖そうとか、読みやすそうとか、無意識に決めつけちゃってませんか?
まぁ…私なんですけど……

そんなわけで、今まで読んだ小説で、私を騙した驚かせた小説を、
いくつか紹介します。もちろん全部面白いですよ!

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Photo by Annie Spratt on Unsplash
1 暗いところで待ち合わせ(乙一

視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった―。書き下ろし小説。
(「BOOK」データベースより引用)

 この表紙を見てくださいよ。ホラーですねぇ~。
そしてあらすじも見てください。視力が無い女の子と、逃亡犯の同棲生活ですよ。
怖いですねぇ、ホラーですねぇ~。

いつのまにか口調がホラーマンになってましたが、
表紙もあらすじも、サスペンスな匂いがしてきます。

ところが、読み終えた後のこの気持ちは何ですか。
なにこれ温かい。

シチュエーションはめちゃ怖いですが、
だんだん2人を、静かに見守っているような気分になれる小説です。

そしてしっかりミステリーもあり。
今まで見かけたけど、怖そうだと思って読まなかった方に
是非おすすめしたいです。

 

……本当は何も知らずに読んでほしいですが、
そしたらこの紹介の記事書く意味無いですね。
ここまで書いといて、何か嫌なことに気づいちゃったけど、
気づいてないことにします。うん。次行こう。

 

2 イン・ザ・プール(奥田 英朗)

「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。
(「BOOK」データベースより引用)

プールの底に赤ちゃん……
この怪しげな表紙に最初は、難解なミステリーかホラー、
それかシリアスで重ーい話かと思いましたが、まったく真逆。

笑える、頭を使わない、めちゃ読みやすい、おまけに短編集です。
むしろ難解な本に疲れた人におすすめしたい。
というか色々疲れた人におすすめしたい小説です。

いや~この表紙でどれだけの人が勘違いしてきたのやら…
私も本屋さんで何回も見かけたのに、しばらくスルーしてましたからね。
どんな本でもせめてあらすじは見るべきだと、この本に教わりました。

 

おんなじようなこと書いてますが、良ければこちらもどうぞ↓

l84blog.hatenablog.com

 

3 ムーミンパパ海へいく(トーベ・ヤンソン

かわいいムーミントロールとやさしいママ、おしゃまなミイにすてきな仲間たち。毎日が平和すぎてものたりないムーミンパパは、ある日一家と海をわたり小島の灯台守になります。海はやさしく、ある時はきびしく一家に接し、パパはそんな海を調べるのにたいへんです。機知とユーモアあふれるムーミン物語。
(「BOOK」データベースより引用)

 怖そうなのに…って小説ばかりなので、次は可愛い顔して…な小説です。

ムーミンシリーズは、大人も楽しめる童話ですが、
その中でも「ムーミンパパ海へいく」はヤバいと思います。

パパは周りを巻き込んで空回りするし、ママはノイローゼ気味になるし、
ムーミンは思春期真っ只中だし…。

あのほんわかな雰囲気はどこいったって感じです。
深い。暗い。読みづらい。

ただ、ムーミンの成長していく過程や、
環境が変わっても、まっったくブレないミイは見どころです。

でも、もしこれを読んでパパが嫌いになりかけたら、
ムーミンパパの思い出」をおすすめします。嫌いにならないで……

ちなみに、この小説にはスナフキンが出てこないので、
スナフキン好き&大人向けが読みたい人は、
ムーミン谷の十一月」がおすすめです。まさかのムーミン出てこないけど。

 

4 キノの旅シリーズ(時雨沢 恵一)

「キノはどうして旅を続けているの?」 「ボクはね、たまに自分がどうしようもない、愚かで矮小な奴ではないか? ものすごく汚い人間ではないか? なぜだかよく分からないけど、そう感じる時があるんだ……でもそんな時は必ず、それ以外のもの、例えば世界とか、他の人間の生き方とかが、全て美しく、素敵なものの様に感じるんだ。とても、愛しく思えるんだよ……。ボクは、それらをもっともっと知りたくて、そのために旅をしている様な気がする」 ―――短編連作の形で綴られる人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の話。今までにない新感覚ノベルが登場!
Amazon商品ページより引用)

 ラノベキノの旅しか知らないので、他にもあるかもですが……

とにかく表紙が可愛くて綺麗です。「キノの旅」ってタイトルも良いよね。
そして内容はタイトルの通り、キノが色々な国を旅する短編集です。
喋る二輪車と世界を旅してまわる……独特の世界観がとても魅力的です。

ここまでは表紙の印象のままですが、なぜギャップがあるのかというと、
それは、強烈な風刺と皮肉。

どの国もそれぞれの文化・ルール・常識・事情があり、
文体は軽く読めますが、内容は決して軽くないです。
あれこれと考えさせられます。

さらにキノが旅している世界も、全然安全な世界じゃなく、
いつでも死と隣り合わせです。
なので、残酷な場面やちょっとグロい場面もあります。

それでも、キノとエルメス二輪車)が客観的で冷静、
さらに2人の軽い掛け合いも面白く、読んでいてしんどくなることは無いです。

「表紙アニメっぽいし……」と思っている人も、是非一度読んでみてほしいです。
特に、星新一とか好きな人におすすめです。

 

 

以上、表紙と内容にギャップがある小説でした。
人と本は見かけによりませんね。

安部公房『けものたちは故郷をめざす』感想

安部公房終戦後+満州=難しくてしんどい小説……と思って、
アホで歴史が苦手な私は、ずっと避けてきましたが、
図書館にあるのを発見して、つい借りちゃいました。

読んだ感想は、読みやすい!しんどい!!です(雑)
今まで読んだ安部公房の小説の中で、一番読みやすかったので驚きました。
ただ、しっかり不条理なので、元気なときに読むことをおすすめします……

 

そういや、前回のこころに引き続き、今回の本を読んだので、
ちょいしんどくなって、気分を変えようと映画を見たんですけど、
何を思ったかレオンを選んでしまいまして。アホですね。
でもレオンは良かったです。観葉植物育てたくなりました(何の話)

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Dave NoonanによるPixabayからの画像

満州に育った少年・久木久三は一九四五年の敗戦、満州国崩壊の混乱の中、まだ見ぬ故郷・日本をめざす。極限下での人間の存在を問う、サスペンスに満ちた冒険譚。故郷、国家…何物にも拘束されない人間の自由とは何か。安部文学の初期代表作。
(「BOOK」データベースより引用)

内容

あらすじの通り、久三がまだ見ぬ故郷、憧れの日本を目指して旅をする、
ロードムービー的な(ムービーじゃないけど)内容です。

あらすじだけ見ると、少年の切実な夢……!冒険……!てな感じですが、
実際は荒野を、信用のおけない、素性がわからない男と二人で、
極限状態の中、ひたすら歩くという内容がほとんどです。

つらい。

 

極限状態

寒さ、飢え、渇き……どれも経験したことがなく、共感できないはずなのに、
読んでいるとこちらまで辛くなるほど、極限状態の描写がリアルです。

砂の女」とはまた種類の違う、息苦しさというか孤独感というか……

だからといって、「つら…もう読めね……」ってなることもなく、
次々読み進められるのが不思議です。

 

ちなみにこの間、朝から雨で、靴下までぐしょ濡れで一日を過ごし、
雪が降りそうな中バイクで帰りましたが、
荒野を歩く久三を思うと、まったく辛くなくなりました。むしろ天国。
……比べるもの間違いましたね。ちっさいですね。

 

久三と謎の男

久三が道中出会うのが、素性の謎な男、高石塔(最初は汪という名前)

最初、久三と出会う場面では、落ち着いていて機転が利きそうだし、
眼鏡をかけて、本を読んでいて、
久三も「学校の先生みたい」と思うほどに、まともに見えて、
もしかしたらこの人のおかげで良い方向に……?と、
一瞬思いましたよ。一瞬。

まぁ、そんなわけはなく……

どんな人だったのかは、詳しくはネタバレになるので書きませんが、
とにかく生命力の強い、狡猾な人です。

 

対して久三は真逆で、純粋に日本に帰りたい一心の、まっすぐな少年です。

二人の性格は、
極限状態で、やっと馬車に乗せてもらうのに、有り金全部差し出そうとする久三を、
高がすぐに止めて、安い金額を言うところなどに、よく表れていると思いますね。

 

高のことは信用していないけど、高に何か考えがありそうなのと、
「一人よりは二人の方が……」という感じで、高と行動します。

しかしね……何回読みながら、
久三そいつ絶対怪しいって!もう置いてけ!……と思ったことか。

でも久三も、私に言われなくたって(?)たぶんわかってるんですよね。
それでも憎みながら、怪我で死にかけてる高を助けたりするし、
高がいなくなれば不安になったりもします。

そして、あんなに久三につっこんでた私も、高がいない場面では、
まさかの不安な気持ちになったり……

なんでしょうね……怪しいと頭ではわかっていて、憎みながらも、
離れられない様子が、恐ろしいです。

 

故郷と日本人

私は生まれ育った町から出たことが無いので、外に出てみたいという気持ちはあれど、
故郷に帰りたい気持ちというのは、いまいちピンときません。

なので、久三の切実な日本への気持ちが、すべて理解はできないのですが、
理解できない理由がもう一つあって。

それが、久三を拾ったソビエト軍の人たちが、良い人だったということ。
特にアレクサンドロフ中尉という人が、作中一番の良い人物です。もう本当に。

私なら日本に憧れながらも行動できず、そのまま満州で暮らしそうですが、
久三の故郷への思いの強さが、ロシアの人が良い人ほど、伝わりました。

 

あと作中やりきれないのが、
上記のアレクサンドロフ中尉や、あと途中で出会う中国人の少年など、
日本人以外の人は、良い人、または普通の人が多いのに対し、
出てくる日本人が、みんな印象が悪いこと。

久三の憧れている日本ってなんなんだろう……と思わされてしまいます。

 

まとめ

さてさて、久三たちは無事、
日本にたどり着くことができるのか……!?(無理やり明るく)
……とか思いながら読んでたら、ラストがとんでもなかったです。

途中も「けものたちは故郷をめざす」というタイトルぴったりだと思っていたけど、
最後まで読んでタイトルを見ると、なんかぞくぞくしました。

 

 
【追記、おまけ】
高……ていうより最初の方の汪さんを、勝手なイメージで落書き。難しい……
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もっと感じ悪いかな……でも、表向きは良さげだと思うんですよ表向きは。
現実にいたらかなわんけど、キャラクターとしてはこういう人好きです。